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弥輿(みこし)
第10章 豊漁祭・秘中の儀式
(全てのお膳立ては調い、弥の巫女を据えた奥宮祭が始まる、男共の欲望に満ちた祭が……)
現に弥の巫女を祭壇に座らせた柊が、祭の始まりの為に神輿に近付き、中から厳重に包まれた御神体の一部を取り出し祭壇の向こう……御神体の間へと入って行った。
担いだ御神体の一部を、御神体本体と合わさる事から奥宮祭が始まる。
確か『御霊を戻す』そう言ったと記憶にあるな、完全な形となった御神体と交合に挑む……流石に30年の巫女の不在で、私の記憶も少し薄れているよう。
「掛(か)けまくとも畏(かしこ)き金精大明神の大前を挂(おろが)み奉(まつ)いて畏み畏みも白(もう)さく………」
「……………」
柊の神官としての祝詞が始まった。
普段は穏和な柊だが、この様な場では凜とした神主らしい雰囲気を醸し出すから不思議なものだ。
(弥の巫女が先だったのか、久遠神社の御神体が先だったのか、宗方でも古すぎて文献すら残っておらん)
一説には村の共有物である『陰嫁』を隠す為に久遠神社が出来たともあるが、では何故弥の痣を持つ者が宗方の中に産まれる?
しかも同じ宗方でも、分家の1つである愛海の家系だけに表れ、他の分家では1人も排出していない。
そもそも男系の宗方家というのに、唯一女系が続く理由はなんだ?
(究明したいと思ったが、聖海(サトミ)は私を嫌った
それから30年が経ち、今度こそ愛海で究明出来るのだろうか、それすら分からん)
少々古臭い思い……
30年前、宗方同士ではどうなるかと、私は聖海を孕まそうと動いた。
だが結果は周知の通り聖海は逃げ出し、愛海はあの男の子であるのは明らか。
(口惜しいのか私は……
だからこそ愛海を無理矢理な手段を使ってでも弥の巫女に据えた、私の悲願を叶える為に……)
何故あの時避妊薬を飲ませた?
あれだけ精子を注ぎ込めば孕む可能性は十分以上にあったというに、私は我欲より宗方当主としての利をを優先にし、なのに弥の巫女となった愛海を見て再び我欲に火が点くとは……
弥の痣は無かった、私がそう言い切れば愛海は私のものだった筈、後悔先に立たずと言うが今が正にその通りだろう。
いや、まだ機会は残されている。
宗方当主の私は、弥の巫女を抱く事を許されているのだ。
計画的に避妊薬が切れた日に、愛海を此の手に掛ければ良い。