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自由という欠落
第3章 選べない貴女
好意と侮蔑。期待と失望。
まひるが陽子にいだく感情を一括したとすれば、矛盾だ。矛盾は説明し難い色の糸がもつれ合っていて、適当な一本を引き抜けば、肉欲が現れ出る。
有限など不要な悦楽に、陽子をさらった。何度目かの極地のあと、陽子はまひるにキスをせがんで、互いの唾液を嚥下した。指に残った陽子の匂いがまひるを酔わせる。肩の凝り固まるような職業の女を抱き締めて、ピアス穴一つない耳元で音を立てながら、まひるは自身の指をしゃぶった。
「まひるちゃんは」
パンティを履き直しながら、陽子が呟いた。
部屋は、女の匂いが染み渡っていた。
翌朝の清掃員に申し訳なく感じながら、まひるは陽子がブラジャー、カットソー……と、衣服を整えていくのを横目に見る。
「真実の愛って、信じる?」
考えるまでもない問題だ。
まひるは否定の沈黙を置く。陽子の肌が隠れていくのを惜しみながら。
「いいえ」
…──愛なんて、ドラマや漫画を飾るためのモチーフだと思います。
第3章 選べない貴女──完──