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Seven
第1章 第一印象は笑顔
「やべっ、つぼった! 久々に聞いたよ、そのフレーズ!」
少年みたいに無邪気に笑う陣川さんに失礼だと思いつつも、「可愛い」と思ってしまった。
「魅力的な人なんて世の中たくさんいるじゃん。好きになっちゃったら仕方ないと思うんだよね。分からないじゃない? いつ誰を好きになるかなんてさ」
彼の言うことも一理ある。私は自分に自信がないから、特にそう感じる。自分より魅力的な女性なんて、世の中に五万といる。惹かれてしまったのなら、仕方がないこと。
三歳年上の元カレと別れたのも、これが原因。
──「お前より、いい女見つけたんだ」
そう言われてしまっては、「そっか」としか返しようがなかった。数ヵ月後、彼が結婚したと噂で聞いた。
「……西宮さん?」
「あ、すみません……」
「お茶、冷めちゃうから飲んどきな」
「はい」緑茶が入った湯飲みを手に取った。温かさが手のひらに広がっていく。口に運ぶと、緑茶の香りに心が和らいだ。
転職を決めたのも元カレのことがあったから。彼がパートナーとして選んだのは、私の上司。気まずくて、職場に居ずらくなった。先輩と私は仲がよかった。なんでも相談できる相手だと信頼を寄せていた。けれど、それが裏目に出た。先輩は私と彼がうまくいくようにと、彼とも連絡を取っていた。そこから、彼との仲は急速に発展していったのだろう。
先輩と最後に話したのは、「ごめん。私、彼のことを好きになっちゃった」と打ち明けられた時。それ以降は、いい思い出がない。
「……ここ終わったら、飯行こう。奢ってやるから」
「え? でも──」
「【腹が減っては戦は出来ず】」
「それはそうですけど……」
「嫌なことは食って忘れろ!とも言うだろ?」
「初めて聞きました」
「だろーな! 今、俺が作った名言だから」