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Seven
第6章 グランジ
エレベーターを降りた先にあるコンビニに入ると、意外な人物と鉢合わせた。
「あら!!」
「あ! 深雪じゃん」
「え!? ジュディさん!? それに、ユータくんも!?」
一般のお客様も一階にある窓口に来店されるが、まさか二人とうちの会社で出会すとは思いもよらなかった。
「お二人も保険に?」
「そんなわけないでしょ!」
「……ですよねー」
「ジュディさん、保険の加入だと間違えられて怒ってやんの」
「なによ!! アンタこそ、失恋保険でも入れば? すーぐ泣くんだから」
「は!? いつ誰が泣いたんだよ!! そんなことくらいで泣かねーし」
「まぁまぁ……」彼らを落ち着かせるのは容易じゃない。人の話を全く聞かず、いがみ合いは続いたまま。どうしたもんかと困っていたら、「迷惑だ!」とコンビニの店長から追い出されてしまった。そのことが火に油を注ぎ、言い合いはエスカレート。
「おい、ロビーのど真ん中で何を騒いでいる」
「あ……申し訳ございません、社長……」
今日は他県で会議があり、一日留守だと朝礼で聞いていたのに、なんで社長が会社に戻ってくるの!? それもタイミングの悪い、今!!
「純哉(じゅんや)。俺に用事だったのか?」
「……ジュンヤ?」
「誰?」と首を傾げる私とユータくんの後ろから聞き覚えのあるような男性の声がした。
「いや、今日は別件で来た」
振り返った先にいたのは、紛れもないジュディさんで……。でも、声がいつもと違う。普段の高めな声ではなく、男性らしい低く逞しい声。
「そうか。頼むから、周りの迷惑になる行為はやめろ。いいな?」
「分かってる。悪かったな、うるさくして」
「大丈夫だ。それより、この間の約束覚えてるか?」
「もちろん」
「楽しみにしてるからな。お前との食事は最高だ」
「どうせ、俺のテーブルマナーが見たいだけだろ?」
「あぁ。お前の食べ方は美しいからな。あ、悪い。もう行かないといけないんだ。じゃ、またな。純哉」
「あぁ。またな、春(はる)」
ジュディさんの切ない表情を見て、ずっと片想いしている相手が誰なのか分かった。……なんだろう。このやるせない気持ちは。自分の気持ちを隠すために【男】友達の一人として社長と接しているジュディさん。切なすぎる……。
「なんで、深雪ちゃんが泣くの? ……好きになったアタシが悪いのに」