この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Seven
第6章 グランジ
誰かを好きになることは、決して悪いことなんかじゃない。世間から許されないとされる恋もあるけれど、誰かを好きになる感情はごく自然なこと。惹かれてしまったら、その気持ちには抗えない。
それなのに、ジュディさんは「好きになったアタシが悪い」と言った。その言葉が私の心を締め付けて、涙は次から次へと目から溢れ落ちていく。
「ここで泣いてたら、また目立っちゃうから、どこか人の少ない場所に移動しましょ」
「それなら、スタッフオンリーの扉向かいにラウンジがあります。お客様のためのスペースですが、利用される方は滅多にいません」
「じゃ、そこに行きましょ! ユータ、ボサッとしてないで飲み物買ってきて」
「えー……。嫌だよ、さっきのコンビニに行くのは。追い出されたばっかだし……」
「空気の読めない男はモテないんだから! いい? アタシたちは、これから女子トークに花を咲かせるの。男のアンタがいたら、邪魔でしょ!」
「自分だって……」不貞腐れるユータくんをジュディさんが目で制圧する。「早く行きな」鋭いジュディさんの眼光はユータくんに有無を言わせなかった。重い足取りでユータくんがコンビニへ歩き始め、私たちもラウンジへ移動した。
「本当、ユータは空気が読めないんだから」ラウンジの椅子に寄り掛かるようにジュディさんは腰掛け、左手を左頬に添えながら、ため息を吐いた。その仕草を見ても、【乙女】そのもの。
「深雪ちゃん、早く泣き止んで。神出鬼没の社長様に見つかったら、またアタシが怒られちゃうでしょ」
「すみません……」
「──けど、ありがとうね。アタシなんかのために泣いてくれて。春とアタシは幼馴染みなの。学生時代、思い切って春に【好き】って伝えたことがあるんだけど、春もね……【好き】って返してくれて、でもアタシ勘違いして……春のファーストキス奪っちゃったの」
「え!?」
「ほら、若気の至りってやつ」
「それじゃ、社長が言った【好き】というのは……」
「そっ。友達としての【好き】。完全なる、【ライク】。……それなのに、泣いて謝るアタシに『ファーストキスの相手が親友のお前でよかった』って。もう、ますます惚れて、一回も二回も変わらないから、もう一回しちゃった」
「ジュディさん、意外と大胆なんですね」
「ふふふ♪ あの頃は若かったから」と微笑むジュディさんにつられ、私も笑みを返した。