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Seven
第6章 グランジ

 久しぶりに雪さんと二人きりで会話できたのに、嬉しい気持ちは全くない。むしろ、話さないほうがよかったとさえ思っている自分がいる。……全然うまくいかない。雪さんの言うようにタイミングが合っていないのかもしれない。このまま思い続けても苦しいだけかな……。

「空気が重い」

 オフィスに戻るために乗り込んだエレベーター。誰が乗っているのかも確認せず、下を向いたまま乗ってしまった。声の主は誰か分かっている。どうして、今日は行く先々で出会すのだろう。

「……社長」
「通夜みたいな顔で仕事するな。うちは葬儀社じゃない」
「すみません……」
「ったく。最近のお前について、数名の社員から様子が変だと報告を受けている。体調でも悪いのか?」
「いいえ。体調は良いです」
「じゃあ、その暗いオーラは何だ!?」
「……すみません。プライベートで、ちょっと色々ありまして」
「プライベートを仕事に持ち込むな……とは言わない。俺だって、同じように落ち込んで何も手につかない日もある」
「え!? 社長がですか?」
「……お前、俺をサイボーグか何かだと思ってるな」
「いいえ! でも、意外で……」
「俺だって人の子だ。感情をうまく表に出せないだけで、人と同じように生きている」
「……失礼しました」
「いや、いい。腹を割って話せる社員は貴重だ。役職が付くと、それなりに気を使って本音で物を言わなく──いや、言えなくなる。むしろ、言いたいことを言ってもらえるほうが会社をまとめる立場上、都合がいい」
「……そう、ですか」
「会社のことで何かあれば、すぐ教えてほしい。こんな話を耳にした、というのでも構わない。現場に近い者のほうが見聞きすることは多いからな」
「わかりました」

 目的の階に到着し、エレベーターから降りると社長が私を呼び止めた。

「西宮。あまり、雪の言葉を真に受けるな」
「え? どういう意味ですか?」

 片手を上げた社長の姿が扉に閉ざされた。私の問いを残し、エレベーターは上昇していく。雪さんの言葉を真に受けるなというのは、一体……。
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