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Seven
第6章 グランジ
「おはよー」
「おはようございます! って、のんびり挨拶している場合じゃないですよ!」
「あー、そんなに大変なことになってんの?」
「大変どころか、大惨事です! みんなドタバタしてて……」
「そうなんだー」
「何を他人事みたいに!!」
「──俺、会社クビになったから」
「……え」
「だから、クビになったの。大変なときに申し訳ないけど、そういう訳だから出社できない」
「そんな……無責任な──」
「しょうがないんじゃない? 社長命令なんだから」
「でも……杉野さんには連絡入れるべきですよ! 上司ですし」
「だから、こうして西宮さんに連絡したんでしょ。スギさんに伝えといて」
「そんな!! 自分で直接言ってください!」
「……頼んだよ」
一方的に電話を切られてしまった。雪さんの退社を今伝えたら、火に油を注ぐことになりそうだ。電話を終えた私に小林さんが詰め寄った。
「雪さん、何だって言ってました?」
「……それが──」
雪さんと交わした内容を小林さんに伝えると、彼も頭を抱えだした。
「マジかー……。全部のタイミングが最悪だ……」
「でも、杉野さんに伝えないわけにはいかないですよね……」
「……ますます火山が大噴火しますよ。この話、聞かなかったことにしましょ。何も知らない、何も聞いてない、電話はなかった──そうするしか現状をマシにはできませんよ、ここまで来たら」
【隠蔽(いんぺい)】という手段は使いたくない。だったら、時間を空けてでも真実を伝えるべきだ。「雪さんには困りましたね……」ため息を吐く小林さんに合わせるように私もため息を吐き出した。