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Seven
第6章 グランジ

 オフィスの現状を見て杉野さんに伝えようという結論に至り、小林さんと二人でオフィスへ戻ることにした。思った以上に現場は大荒れだ。車通りの多い交差点のように社員たちがオフィスの通路を行き来している。

「小林! こんな一大事のときにどこ行ってた!!」

 杉野さんからの雷が小林さんを直撃した。それも一度ではなく、二度、三度……。切羽詰まっているときだから、いつもより気迫が増している。どう対応するのだろうと小林さんに視線を送っていると、「雪さんから電話がありました」とストレートに杉野さんに伝えた。

「で、アイツ何だって?」
「社長命令で会社を退社したから出社できない、と」
「は!? ったく、あの若造は何考えてるんだ!! 悪いが、社長に会ってくる!!」

 「その必要はないですよ、スギさん」片手を挙げた社長がオフィスの入り口に立っていた。「おい、お前は何を考えてるんだ!? 雪に責任も取らせず──」もの凄い剣幕で社長に詰め寄ると、社長の胸ぐらを杉野さんは勢いよく掴んだ。騒然とする場面だが、傍観しているのは私くらいで、他の社員は二人の会話すら耳に入らないほど、忙しなく動き回っていた。

「何って責任を取らせただけですよ」
「このどこが責任を取ったって言うんだ! アイツの契約先とは関係のない社員たちが雪の代わりに走り回っているんだぞ!! 責任を取らせるなら、この状況を治めさせろ!」
「……申し訳ないが、それはできない。雪には別の責任の取り方をさせた」
「お前……まさか──」
「さすが、スギさん。話が早くて助かります。そのために雪には退社してもらいました」
「この状況に陥ることを予測してたのか?」
「私だって馬鹿じゃない。目には目を、歯には歯を、ですよ」
「……本当末恐ろしい奴だな、お前は」
「やられっぱなしは性に合わないもので」

 社長と杉野さんは互いに微笑むと距離を取り、持ち場へと杉野さんは戻っていった。

「西宮さん。ちょっといいかい?」
「は、はい!!」
「スギさん。西宮さん、ちょっと借りるよ」
「あぁ」

 社長は私をオフィスから連れ出すと、そのまま社長室へと向かった。

 
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