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Seven
第1章 第一印象は笑顔
一時間ほど仕事の話をしたところで、お昼休みを告げるチャイムが社内に鳴り響いた。
「それじゃ、今日はこれで失礼します」
「失礼します!」
立ち上がった陣川さんに次いで私も立ち上がり、お辞儀を園田さんと交わした。
「またね、西宮さん。連絡先は次回交換しよう」
「今交換したらいいじゃないですか?」
「僕は君と違って奥手なんだよ、陣川くん」
「……そうですか。行くよ、西宮さん」
「はい! では、また」
笑顔で手を振る園田さんに見送られながら、私たちはエレベーターに乗り込んだ。
「甘い顔しすぎ」
「え?」
陣川さんから向けられた表情は氷のように冷たかった。「ご、ごめんなさい……」謝罪の言葉も彼には届いていない様子で、ボタンの上に表示されている電子数字が下がっていくのをじっと眺めていた。
明るい彼と、かけ離れた今の彼。どっちも陣川さんであることに変わりないのに、別人ならいいのに……と思ってしまう。真面目さに欠けるかもしれないが、私は明るい彼のほうがいい。
エレベーター内に立ち込めていたギスギスした空気は開いたドアによって放たれた。踏み出した瞬間、酸素はこんなにも軽かったんだと感じた。
「失礼します」受け付けの女性社員に挨拶をした陣川さんは明るい彼に戻っていた。