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Seven
第7章 急加速

「今、仕事明け?」
「はい。そうですよ」
「そっかー……」

 次に来る言葉に期待してしまう。「だったら、飯でも行かない?」「このあと、予定空いてる?」できることなら、今すぐ会いたい。雪さんの顔を見て話がしたい。……だが、そんなに上手くいくはずもない。

「俺、これから会議なんだよねー」
「会議、ですか?」
「そっ。社長のお供で。堅苦しいの苦手なんだよなー」
「……大変だと思いますが、頑張ってくださいね」
「サンキュー! 深雪ちゃんに応援されたら、やる気出たわ!」

 「……あの、雪さん」聞かなくてもいいことかもしれないが、それでも確かめたかった。そうしないと、自分の中でモヤモヤを抱え続けることになるから。確信はないけど、きっと彼なら私の質問も重く受け止めたりはしないはずだ。

「ん? なんだよー、改まって」
「……私からの連絡、迷惑じゃないですか?」
「全然!」
「え?」

 意を決して訊ねたのに、返ってきたのは即答の軽い返事。……私が深く考えすぎなだけなのだろうか。

「迷惑だったら、【迷惑】ってハッキリ伝えてる。さっきも言ったけど、深雪ちゃんから連絡着て嬉しかったよ。できれば、また連絡してほしい。ただ、今バタバタしてるから返事を返せるかは微妙だけど。俺も手が空いたら深雪ちゃんに連絡するし!」
「……待ってますからね」
「おう! ……あ、ごめん! そろそろ行かなくちゃ。また連絡します」
「私もまた連絡します!」
「うん、待ってる。──じゃ」

 電話を終えたあとも、雪さんの声はまだ耳に残ったまま。加速する好きの気持ちに胸が苦しくなる。【俺からも連絡する】と言ってくれたことが何より嬉しかった。社交辞令なのかもしれないけど、それでも私の心を満たすには十分。

 今しがた、電話を終えたばかりだが、私は雪さんにメールを送った。

【お忙しい中、電話頂き、ありがとございました! 雪さんと話せて楽しかったです! また連絡しますね! 会議、大変だと思いますが、ファイトです!】

 間髪入れず、彼から返事が届いた。

【サンキュー! 頑張ってきます!】

 短い文章ではあるが、急いで送ってくれたことが嬉しかった。赤ら顔で携帯を握りしめ、駅の階段を昇り、改札へと向かった。

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