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Seven
第2章 ロマンチスト
「──気持ちを隠して嘘をつくより、嘘がつけない素直な子のほうが俺は好きだけどね」
信号待ちの車内。目の前の赤いランプよりも私の顔は赤く染まっているかもしれない。
「西宮さん、遊び相手作りなよ。若いのに勿体ない」
「え? 遊び相手、ですか?」
「そっ。会いたい時に会えて、したい時に──」
会話を中断させたのは、ワイシャツの胸ポケットから鳴り出した彼の携帯だった。「ごめんね、すぐ終わるから」謝罪すると、彼は いそいそと電話に出た。
「──今日? あー、ごめん。先約がいるんだ。うん。この穴埋めは必ずするから。え? 今、それ言わないとダメ? 欲しがりだなー」
不特定多数──そう彼は言っていたけど、相手の女性達はどう思っているのだろう。理解した上で、彼と遊んでいるのかな……。
陣川さんは楽しそうに話している。もし私が不特定多数の中の一人だったら、自分以外の女性と遊ばれるのは嫌だし、自分以外に笑顔を向けないでほしいと思ってしまう。独占欲が強いのかもしれない。
「ん? 放置されて寂しかった?」
「別に……」
変なことを考えていたせいで、素っ気ない態度になってしまった。その上、陣川さんの顔さえ、まともに見れない。何してるんだろう、私……。
「……今の電話、男友達からだから」
「えっ!?」
「驚きすぎ。俺って、そんなに遊び人に見える?」
「はい」
「即答かよ! 西宮さんが思ってるより遊び人じゃないからな!」
「その必死さが逆に怪しいですよ」
「お前なぁ~」
不機嫌そうに見てくる陣川さんが面白くて顔を綻ばせれば、彼もつられて笑い始めた。和やかな雰囲気が狭い営業車に溢れている。居心地の良い空間。営業先に着いても、まだ二人は笑い合っていた。