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Seven
第2章 ロマンチスト
早いもので、入社してから一ヶ月が過ぎた。陣川さん以外の社員の方とも打ち解け、充実した毎日を送っている。──ただ、一点を除いては。
「西宮さーんっ!」
グレーカラーのスーツを着た男性が部署の入り口に立ち、こちらに向かって手を振っている。見た目は爽やかな好青年。黙っていれば、それなりにモテるだろう。
「げ、また来たよ……」隣の席の栗木(くりき)先輩が重い息を吐き出した。ショートヘアの似合う小顔なクール美人。仕事も育児も家庭のことも完璧にこなす、キャリアウーマンだ。
「また、ということは……」
「はい、本日二回目のご登場。さっき、西宮ちゃんがトイレに行ってるときに来たの。いないって伝えたんだけど……しつこい男」
「そうだったんですね……」
そんな会話をしている内に、彼は部署内に入ってきていた。
「西宮さん、会いに来ました!」
「え?」
「ん? あー、もちろん仕事もしますよ」
彼にとっての優先順位は仕事よりも私に会うことなのだろうか? いまいち、よく分からない。ニコニコ微笑んでいる彼は、青葉 晃(あおば ひかる)さん。各部署に置かれているコピー機等の販売元に勤務していて、時々点検などで顔を出す。
「初めまして」の挨拶を交わしてから私を見かける度、こうやって彼は会いに来る。
「変わり者に好かれたね」
「もう、栗木先輩!」
横から茶々を入れてくる栗木先輩。この状況を楽しんでいる。