この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Seven
第2章 ロマンチスト
今回の営業先は、やり手の女社長。太巻きのカールがかかった茶色のロングヘアを耳に掛けている。若くも見えるが大人の女性が醸し出す妖艶さもある年齢不詳の美女だ。モデル並みの抜群なプロポーションを強調するワインレッドのワンピースを着ている。若干、陣川さんの鼻の下も伸びているような……。
「待ってたのよ、陣川くん」
「すみません。ご無沙汰してしまって」
「それで、今日は相談があるんだけどね」
陣川さんが座っているソファーに女社長は移動し、密着する形で商談を始めた。その様子を向かい側のソファーから眺める私。この場にいなくてもいいのではないかとさえ思えてくる。チラチラと送られる女社長からの視線。「お邪魔虫は、どこかに行きなさい」と言われている気分だ。
「すみません、化粧室はどこに──」無言の圧に耐えられず、声をかけると女社長は嬉しそうな声で「それなら、柳(やなぎ)! 案内して差し上げて」と近くに立っていた黒服の男性を私の元へ向かわせた。
「では、ご案内致します」
男性の後に続いて室内を後にする。長い廊下。真っ白な壁。無言のまま、奥へと進んでいく。一体、どこまで行くのか……。トイレの案内看板も一向に見えてこない。
「あの……」
「間もなく着きますから」
「はい……」
余計なことは一切話さない黒服の男性。寡黙なのか、仕事上そうしているのかは分からないが、静かな空間に息が詰まりそうになる。