この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Seven
第3章 青春カムバック
「胸を揉むのも効くらしいけど、それより効果的な方法」
「そんなのあるんですか?」
「聞きたい?」
「危ない方面の話じゃなければ……」
「大丈夫だよ。筋トレだから」
「へ? 筋トレ?」
意外過ぎる方法に変な声が出てしまった。筋トレなら家でも出来るし、続けられそうだ。
「腕立てが特に効くらしい」
「へぇー! 試してみます!」
「効果が出たか、俺にも試させて」
会話の流れで思わず、「はい! ぜひ!」と返してしまった。「あ……」と固まる私を見て、陣川さんは お腹を抱えて笑っている。
「やべ、つぼった! どうすんだよ、営業先着いたのに! 笑いが治まるまで動けないじゃん!」
「すみません……」
「もう──西宮さん、いいキャラしてるよ!」
「──っ!!」
彼に触れられた腕が熱い。ただ軽く腕を叩かれただけなのに……。陣川さんの満面の笑みのせいだ。そんな少年みたいな無邪気な笑顔を向けられたら──
高校生の頃みたい。好きな人の笑った表情にときめいて、体が触れ合っただけで全身が脈を打って、【恋】していることを自分の全てで表現していた青き春。大人になって忘れていた全力投球の恋を思い出した。
陣川さんといると忘れていた自分が顔を出す。──不思議。今まで、どこに行っていたのだろう。それとも、傍にいたけど見えていなかっただけ?
どちらにしろ、陣川さんが思い出させてくれたことに変わりはない。だからなのだろう。彼を《特別》だと感じてしまうのは……。