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Seven
第3章 青春カムバック
笑いが治まった彼は優秀なビジネスマンへと変貌し、新しい顧客を獲得した。先ほどまでの同一人物とは思えないほど、今の彼は勇ましい。
営業終わりの車内。陣川さんは、いつになくご機嫌だった。
「ちょうど昼時だな! 新しい契約も結べたし、昼飯食いに行こうぜ! 奢ってやるから」
「え? いいんですか? 悪いですよ!」
「男が奢るって言ったときは素直に『ありがとう』って言えばいいんだよ」
「分かりました。それじゃ、お言葉に甘えて──ありがとうございます、陣川さん!」
「違うな。『陣川さん』は、よそよそしい。『雪さん』に言い換えて、やり直し!」
「は、はい……」
彼のことを名前で呼んでいる人たちも、こんな風に彼に言われたんだろうな。そう思ったら、頬が緩んだ。
「なに笑ってんだよ」
「皆さんにも、こうやって名前で呼ばせたのかなと思って」
「あー、そうだったかも。でも、小林は違う。自分から『雪さんって呼ばせてください!』って言い出したんだよなー。男に名前で呼ばれても嬉しくないって断ったのに、アイツしつこくてさー」
口では嫌そうなことを言っているが、顔は正直だ。「部下から好かれて嬉しい」と幸せな笑みを浮かべている。
「俺のこと名前で呼ぶのは、二人きりの時だけな。──他の奴らには内緒。分かった?」