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Seven
第3章 青春カムバック
耳元に落とされた低い声。鼓膜を揺らすだけでなく、私の心までも震わせた。もっと、彼の声を独占したい……。声だけじゃなく、できれば──
「あ、悪い。電話だ」
甘い考えは一気に現実へと引き戻された。「もしもし」と電話に出た彼の声は弾んでいた。表情も浮かれている。通話している相手が女性だとういうことは、誰が見ても直ぐに分かる。楽しそうに話す彼の姿を助手席で眺めている内、ふとした疑問が浮かんだ。
──もし、私が雪さんに電話を掛けたら、彼はどんな顔で電話に出るのだろうか。
とても気になる。迷惑な顔をするのか、今みたいに楽しそうな顔をするのか。はたまた、コイツからの電話か……と、知らん顔で電話にすら出てくれないかもしれない。どの顔も容易に想像がつく。ほぼ毎日、仕事で彼と一緒にいるからだろう。
しかし、取引先の園田さんと初めて会った入社初日以来、雪さんの不機嫌な怖い顔を見ていない。もう一度怒っている姿を見たい訳ではないけど、あの時の雪さんが少し引っ掛かる。怖かっただけじゃなく、その裏に他の感情もあったような気がして……。
彼を気にかけるようになって、彼のことを知ろうとして、彼をよく見るようになって、気づいたことがある。
雪さんは──とても繊細な人。