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Seven
第3章 青春カムバック

 車の中も机の上も、どこに何が置いてあるのか分からないくらい物で溢れているけど、それは彼が寂しがり屋だから。常に何かに包まれていないと不安なのだろう。本人は「ワイルドだろ?」って一昔前に流行ったお笑い芸人のような口調で言うが、自分の弱さを隠すために おどけているように見える。

 「ワイルド、ですね」私は知らないフリで笑う。それを彼が望んでいるから。

「西宮さんてさ、俺のことよく見てるよね」
「え?」

 視線を送っていることがバレた……!? 口からキャベツの千切りと一緒に心臓が飛び出るかと思った。

 お昼時、雪さんが寄ったのは定食屋さん。「ここの一押しはカツ丼!」と言って、自分の分と私の分を注文してくれた。店主と雪さんは顔見知りらしく、注文を受けた奥さん(おそらく)が忙しい昼時だというのに、わざわざ店主を呼び出した。美味しそうな甘い卵の匂いが店主から香ってきた。

「この間は、ありがとな! 助かったよ、雪くん!」
「いえ! お客様のお役に立つことが私共の仕事ですから」

 「本当助かったよ! サービスするから、ゆっくり食べていっておくれ」と笑顔を残し、暖簾の奥にある厨房へと戻っていった。

「ここ、俺の顧客の店」
「そうだったんですね!」
「この間の台風の時、浸水やら店が破損したり大変だったんだ。保険入ってたから、それで修理出来たんだ」
「……なるほど」
「杉さんからは『会社には損害だ』って大目玉喰らったけどさ、何のために保険があるのかって話じゃない? 保険会社にとっては損害でも、お客様からしたら【困ったときの保険】なわけじゃん。別に、正義のヒーロー気取りするわけじゃないけど、俺は困った人を助けるための営業をしてる」

 だから、雪さんは業績が上位なんだ……と改めて感じた。しっかり顧客のことを考えて仕事をしている。この人に任せていたら安心、というのを先ほど雪さんと話していた店主からも窺えた。仕事だけじゃない。何かという時、彼は皆から頼りにされている。
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