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Seven
第3章 青春カムバック
「ちょっ、何やらかしてんの!?」
「だって急に雪さんが変なこと言うから……。ごめんなさい」
「まったく──可愛いやつ」
どこまで人を夢中にさせれば気が済むのだろう。やわらかな笑みで見つめられ、カツ丼にかかった半熟の卵みたいに心が蕩けてしまいそう。
サーモンピンクのレトロなテーブルに飛び散ったキャベツをいそいそと片す私に雪さんは視線を送ってくる。何を言うわけでもなく、真っ正面からジッと見つめられ、作業がやりにくい。「な、なんですか!!」しびれを切らした私に雪さんは微笑んだ。
「いやー、いい嫁になりそうだなぁと思ってさ」
「そうですか?」
「うん。西宮さん、いい嫁になりそう」
「私ガサツだし……いい嫁からは、かけ離れてますよ」
「そうかな? 嫁にしたいって、男の人から言われない?」
「言われたことないです」
「だとしたら、男たちの見る目が無い」
どこから来る自信なのか、一点張りで【いい嫁】になりそうだと私に言う。
「俺、見る目あるから」
「そうなんですね」
「うん。気になるのは、いい女しかいない」
「それって──」
【恋は盲目】なだけじゃ……と言いかけ、慌てて言葉を飲み込んだ。「なんだよ! 気になるじゃん! 途中で止めんな」膨れっ面をする雪さん。彼を年上だと思えない時が多々ある。あどけない表情は小学校高学年の男児みたい。
「早く食べないと、カツ丼冷めちゃいますよ!」
「話逸らすなよ!」
「カツ丼、美味しいー!!」
「……意外と駆け引きするタイプなのかもな」
「何か言いました?」
「別にー! 俺も食べよっと」