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Seven
第3章 青春カムバック

 保険王とは、一代で大きな保険会社を築き上げた人に送られる称号のようなもの。私が入社したこの保険会社の現会長も名高い保険王の一人だ。雪さんがその御子息だったとは……。

「もしかして、西宮さん知りませんでした?」
「はい……」
「因みに、社長は俺の兄貴だから」

 社長と雪さんが兄弟!? 同じ名字だとは思っていたが、兄弟だったとは意外……。お世辞にも似ているとは言えない。社長は見るからに几帳面で、黒髪をきっちりオールバックにしている。眼鏡の下から覗く冷徹な瞳は社員たちの間で【大寒波】や【冷凍光線】と呼ばれている。片や、太陽のような温かさを持っている弟。雪さんは人当たりがよく、常に誰かが彼の周りにいる。

 雪さんは社長や管理職に興味が無いようだ。彼の隣、助手席に座った小林さんは逆にギラギラと眼光が鋭くなっていた。

「将来的には雪さんが社長になる予定ですか?」
「小林。冷静に考えてみろ。俺が社長なんかになったら、週一出勤どころか会社に顔も出さないよ」
「雪さん、とことん働くの嫌いなんですね……」
「おう! 男なら、やっぱロマンを追わないとな!」
「なるほど! さすが雪さん!」

 太鼓持ちタイプの小林さん。それに敢えて乗っかる雪さん。バランスの取れた上司と部下の関係だ。

 車を走らせながら、雪さんはバックミラー越しに後部座席に座っている私に話しかけてきた。

「そういえば、西宮さんは下の名前なんて言うんだっけ?」
「深雪(みゆき)です」
「どんな字?」
「浅い深いの【深】いの漢字に陣川さんと同じ【雪】です」
「マジか! お揃いじゃん! もしかして、西宮さんも冬生まれ?」
「はい。二月生まれですよ」
「え!? 俺も! 何日?」
「17日」
「俺、7日」

 名前に同じ漢字が入っている二人。同月の同じ【7】の数字が入った誕生日。そして、【7】歳差。まるで、恋愛ドラマみたい。こんなことが現実で起こるなんて想像もしなかった。

──【運命】や【奇跡】って、こういうことを言うのかな……?

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