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Seven
第1章 第一印象は笑顔
「おはようございます」
彼が現れたのは、11時になる5分前。杉野さんから雷が落とされたのは言うまでもなく……オフィスが静寂に包まれた後、彼は私のもとへやって来た。
「はじめまして。陣川です」
「西宮です。よろしくお願いします」
「うん、よろしく」
爽やかな笑顔を落とした陣川さんは明るめの茶色い髪をさらっと揺らした。長身でネイビーカラーのスーツが決まっている。思ったよりも常識人といった風貌をしていた。しかし、二時間もの大遅刻をしても、上司から雷を落とされても、気にしていない様子で微笑んでいる彼は【普通】から大分かけ離れている。
「それじゃ、早速営業に出掛けようか」
「は、はい!」
「杉さん、営業に新人ちゃんと一緒に行ってきます」
「いいから、とっとと働いてこい!」手で払い除ける真似をしている杉野さんに「はーい」と呑気な声を返し、陣川さんは私の前をスタスタと自分のペースで歩いていく。
長身から繰り出される歩幅。20センチ以上の身長差がある私は追い付くのが精一杯。小走り状態で彼の後を追った。
「大丈夫? ごめんね。俺、人の歩幅に合わせられない人だから」
気遣うような視線を送ってはくれるが、言動からは気が利くのか利かないのか、よく分からない。「……大丈夫です」と返し、必死で彼の背を追いかけた。