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Seven
第4章 恋の連鎖が止まらない
「西宮さんは俺と違って真面目だし、やさしいし」
運転しながら、人のことを褒め始めた雪さん。ズルイ……。こんなに心を揺さぶるくせに、私に好意なんてこれっぽちも持っていないのだから。好きになればなるほど自分が苦しくなるだけだと分かっていても、走り出した恋は簡単には止まれない。
「──西宮さんみたいな子だったら、彼女でも悪くないかも」
冗談っぽく言う冗談。本気っぽく言う冗談。どっちにしろ冗談なのに、言葉に本気はないのに、どうして信じたくなってしまうのだろう。
恋は厄介だ。【本当】が見えなくなる。盲目になるどころじゃない。湯気で真っ白に曇ったレンズみたい。視界不良にもほどがある。
友人に話したら、間違いなくこの恋は反対されるだろうな……。
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「やめときな! 絶対、そんな女好きの遊び人と付き合ったら泣かされるって!」
予想以上の反対ぶりだ。仕事が早く終わり、友人とディナーにやって来た。ディナーと言っても高級なレストランやお洒落なお店ではなく、どこにでもある大衆居酒屋だ。
明日が休日の友人はジョッキに注がれた生ビールを勢いよく飲み干した。彼女の送り迎えは、明日も仕事がある私。
「大体、部下に甘い言葉投げかけてる時点で絶対食おうとしてるよね」
「いや、それはないって」
「わかんないよー。実は冗談じゃなくて、本気とか?」
「や、やめてよー!」
「何照れてるの? 何、食われたいの?」
「そういうわけじゃ……」
「もう私たちだって、二十代後半なんだから。おまけに相手は三十代後半の遊び人。学生みたいなピュアラブを思い描いても無駄! 要は、するかしないかの話だから!」