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Seven
第4章 恋の連鎖が止まらない

 「ちょっと!? 困ります!!」何やら外が騒がしい。青葉さんも手を止め、そっちに気を取られている。──逃げ出すなら今がチャンスだ!

 頭を持ち上げ、渾身の頭突きを彼のおでこにお見舞いしてやった。よっぽど痛かったのだろう。大の大人が床に転げ回っている。断末魔の叫び声が部屋中に響き渡った。

「大丈夫か!? ……って、なんだよー。これから俺の格好いい戦闘シーンが──」
「雪さん!? それより早く逃げ出さないと!!」

 ブーブー文句を言っている雪さんの背中を押しながら、急いで怪しげな部屋から飛び出した。どうやって私がここにいることを知ったのか分からないが、雪さんは助けに来てくれたようだ。「これ羽織って」私を気遣ってスーツの上着を私に貸してくれた。彼の香水の香りがバクバクいっている心臓を落ち着かせ、鎮静剤のような役割を担っていた。

 「そっちはダメ。階段のほうが安全」エレベーターに乗り込もうとした私を雪さんが引き止めた。掴まれた腕から男性のやさしい力強さが伝わってくる。青葉さんのような乱暴な強さとは別物。安心感のある強さ。まるで──

「そう不安な顔すんなよ。俺が守ってやるからさ」

 雪さんの笑顔を見たら、強がりも恐怖も全部目から溢れ出した。泣いている場合じゃないのに、止めどなく涙は頬を伝っていく。

「青葉のヤツ……。女性を泣かせるなんて同じ男として許せない」
「ごめんなさい……」
「深雪ちゃんのせいじゃないよ。謝る必要ないって」
「だって……」

 雪さんとの約束を破らなければ、こんなことになっていない。今回の件で大事な顧客を失うかもしれないのに……。それでも雪さんは笑顔を絶やさない。

「仕事のことなら気にしないの。別に会社はここだけじゃないし。むしろ、こんな会社と縁が切れるなら気分爽快だね」
「……雪さんは強いです」
「なに、今さら? ──俺、無敵だから」

 こんなときまで冗談……でも、彼が無敵だというのは本当かもしれない。

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