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Seven
第4章 恋の連鎖が止まらない
「言いませんよ」
「絶対だからな! 兄貴、俺に対しては子供の頃からキツいんだよ……」
誰に対しても社長は厳しい。でも、弟である雪さんの性格等を考えたら、兄としての心配も社長にはあるのだろう。私が彼の姉だったら……社長が雪さんに対して厳しくなるのも分かる気がする。
「なんだよ、その何か言いたそうな顔は」
「い、いえ!」
「ったく……。それより、青葉のヤツ。何か言ってなかった?」
「あー……自分はスパイだって」
「マジ!? アイツ、自分から口割ったの!?」
「はい」
「……マジか」
考え込む雪さん。──もしかして、動揺してる?
「あの……雪さん?」
「──西宮さん」
真剣な眼差しが真っ直ぐ私を捕らえた。緊張感が狭い営業車に張り詰める。
「好きな人いますか?」
「……はい!?」
飛んできたのは、趣旨の分からない質問。それも真顔で聞くようなことじゃないと思う。全然雪さんの考えが掴めない。
「多分──いや、高確率での話な」
「はい」
「青葉は、本気だと思う」
「本気、ですか?」
「そう。本気と書いて【マジ】と読むアレ」
「そんな真顔で冗談言わないでくださいよ……」
「で、西宮さん。好きな人いるの?」
本人を前にどう答えたらいいものか……。「分かりません」としか答えられなかった。
「──俺も分からない」
「は?」
「俺も好きな人いるかって聞かれたら、分からない」
「不特定多数いるんじゃ……」
「大勢をいちいち相手してたら俺の愛は枯れちゃうよ」
「……そう、ですか」
「それにさ──どうせ愛するなら、一人をじっくり愛したいじゃない?」
「だったら、本命を」
「そうだね」遠い目で息を吐き出すように雪さんは言葉を地面に落とした。初めて見た彼の切ない表情。何か引っ掛かりが彼の中であるように思えた。