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Seven
第1章 第一印象は笑顔
出発前に軽く整理をしてから、助手席に乗り込んだ。年上ではあるけど、畏まった雰囲気が彼にはない。いい意味で気を使わなくて済む。営業先へ向かう車内は和気藹々としていた。
「西宮さんは彼氏いる?」
「いいえ……」
「そっかー。歳、いくつだっけ?」
「28になります」
「若っ!! 俺なんて、もう35だよ」
意外だった。見た目も若く見えるが、言動からも30代後半とは思えなかった。
「その顔は意外だった? よく言われるんだよねー。行動がガキっぽいって」
困ったように笑う彼。でも、実際は困っていないだろう。『おどけている』という表現に近い表情をしている。
「こう見えても、俺──彼女いないから」
「意外です」
「やっぱり? でも、不特定多数はいるけどね」
「不特定多数?」
「うん」
つまり陣川さんは【遊び人】ということなのだろうか。彼のルックスなら、世の女性が放っておかないのは頷ける。でも、その全員を相手にするというのは………
「変な想像してない? 不特定多数とは飯行ったりしかしないからね。まったく、昼間から何想像してんだよ」
「なっ!? 変な想像なんかしてませんよ!」
「むきになるってことは、そういう事だろ?」
人をからかって楽しむ陣川さん。「なんて奴!!」そう思う半面、考えが見透かされて恥ずかしい。
「ほら、着いたぞ」
大通りに面した高層ビルの地下へと車は入っていった。思った以上に営業先の会社は大きいようだ。緊張する……。