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Seven
第1章 第一印象は笑顔
営業先に着いた彼の顔は先ほどとは打って代わり、和らいでいた雰囲気も張り詰めたものに変わっていた。営業先の会社へ入ると、受け付けの女性社員に会釈をしたあと彼は声を掛けた。
「あれ? いつもと雰囲気違いますね。髪型変えました?」
下心のない気配りに受け付けの女性も驚き、頬を赤らめた。
「はい。少しだけ髪を短くしたんです」
「とてもよく似合ってますよ」
「へ? あ、ありがとうございますっ!」
「園田(そのだ)さん、いらっしゃいますか?」
「園田ですね。至急、お繋ぎします」
陣川さんは女性の扱いが上手い。でも計算しているわけではなく、根本的に優しい人なのだと思う。それでいて、よく周りを見ている。一度は通り過ぎていった男性社員も、陣川さんの姿に気づくなり、戻ってきた。
「お久しぶりです、陣川さん!」
「おー、久しぶりだな! 最近、忙しそうじゃん」
「はい、お陰さまで」
「仕事があるのはいいことだ! けど、適度に息抜きもしろよ?」
「そうっすね!」
「今度、遊びに連れていってやるよ。いい店、あんだよ」
「ん? それって──」
「おいおい。女性の前だろ、自粛しろ!」
「あー、やっぱそっちの店っすか?」
「他に何があんだよ」
「ですよねー。あ! 上司が呼んでるんで、また」
「おう!」
自社だけでなく、他社にも仲のいい人物がいるようだ。陣川さんは人脈が広い。それにしても、他社のロビーで如何わしい店の話をするのはどうかと……。そんな思いで陣川さんに視線を送ると、「さっきのは冗談だから」と笑って訂正したが、全然冗談には聞こえなかった。彼の冗談は分かりにくい。