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Seven
第4章 恋の連鎖が止まらない
呆気に取られている青葉さんを社長は畳み掛けていく。
「うちの社員を随分と可愛がってくれたらしいね」
「はい。取引先の社員さんたちとは仲良くさせて頂いてます」
「……つまり、【合意の上】だと?」
「そういう事になります。──ねっ、西宮さん?」
彼の問いに私は秒速で首を横に振った。答えは【ノー】以外ない。私は青葉さんに好意を持っていないし、好きでもない男性に自分の体を簡単に差し出したりしない。
「合意などしていません!」
「あんなに乗り気だったのに?」
耳元で囁く彼から距離を取り、「【彼氏】いるので」堂々と嘘をついた。こういう場合、この答えが一番ベストだ。当事者から外れている社長に【彼氏】の存在をアピールすることで、青葉さんとの出来事が合意の上でないことを強調できる。
「君は彼氏がいる女性を自分のモノにしようとしたわけだ? ──噂通りの下衆野郎だな」
【噂通り】ということは、私以外にも青葉さんの被害に遭った女性はいるのかもしれない。だとしたら、社長の言う通りの人物だ。蔑んだ視線を社長は青葉さんに送り続けている。
「青葉くん、君が担当している会社から被害報告があってね。うちの会社も危ないから気をつけたほうがいいと忠告を受けていたんだよ。西宮さんには怖い思いをさせてしまって申し訳ないと思っている。けど、どうしても彼の背景に誰がいるのかを掴む必要があった。そこで、雪と弥生に協力してもらった」
「まさか!? 鈴鹿さんが!?」
「スパイは君だけじゃないってことだよ、青葉くん」
「ちっ……」青葉さんの仮面が剥がれた音がした。
「あーぁ、だから嫌だったんだよ。アンタの会社だけは」
「最高の褒め言葉をありがとう」
「それに──」私に歩み寄り、青葉さんは微笑んだ。
「アンタとは別の形で会いたかった。──俺、アンタに惚れたみたい」
さらっと告白めいたことを言われ、固まる私に「この間は、ごめんね……」と青葉さんは頭(こうべ)を垂れた。演技なのか本心なのか分からないけど、表情から反省の色が窺え、今回は見逃すことにした。