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Seven
第4章 恋の連鎖が止まらない
青葉さんがビジネスの話を始め、ちんぷんかんぷんの私に「忙しいところ、呼び出してすまなかった。もう戻っていいよ」と社長が退室を促してくれた。「失礼します」と退室した直後、携帯が振動を始めた。画面には【陣川 雪】の文字。
「もしもし?」
「あー、俺だけど」
「何ですか?」
「今、どこ?」
「社長室の前です」
「は? なんでそんなとこにいんの? まさか、この間の──」
「社長には何も言ってないですよ!」
「ん? 青葉の件じゃないの?」
雪さんと会話がかみ合っていない。たぶん、私に口止めしたことを彼は忘れている。
「それよりさー。お得意さんから連絡あったから、一緒に出たいんだけど」
「分かりました!」
「じゃ、先に駐車場で待ってるから」
電話を終え、彼が待つ駐車場を目指した。ちょうど駐車場入り口に差し掛かったとき、栗木さんと小林さんに遭遇した。
「お疲れ様です!」
「『お疲れ様です!』じゃないよ! 社長に呼ばれたって聞いたけど」
「青葉さん絡みらしいですね」
どこから情報が流れたのか、二人によると既に社内で噂になっているらしい。人の多い会社なだけに噂が出回るのも早い。
返答に困っていると、背後から声が飛んできた。
「なに道草食ってんだよ。俺、ずっと待ってたんだけど」
「あ、雪さん。お疲れ様」
「お疲れ様です、雪さん!」
「栗木さんも小林も西宮さんのこと足止めすんなよなー。これから営業行くんだから」
「そうだったの? ごめんね!」「そういうことなら言ってくださいよー!」手を振り、二人は「いってらっしゃい」と私たちを見送ってくれた。
「すみません……」
「【噂】なんか相手にしなくていいんだよ。所詮、噂は噂。事実を言ったところで、周りに伝わるのは【噂】なんだからさ」
「はい……」
それもそうだ。伝言ゲームの始まりと終わりが合致する確率が低いのと一緒で、間に何人もの人が入れば、事実は薄れ、【噂】へと変化していく。
「で、その顔は──青葉と何かあった?」