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Seven
第5章 縮まる距離、開く距離
会話が弾まず、気まずくなる回数も増え、一緒にいてつまらないと感じているのではないかと不安だった。でも、栗木さんによると『西宮さんは最高のパートナーだよ!』と雪さんは嬉しそうに話していたらしい。
お世辞だったとしても、そう言ってくれたことが嬉しい。仕事で足を引っ張ってしまうことがあって、雪さんに迷惑をかけてしまうことも多々……。それでも彼は怒るどころか、「初めは、みんなそんなモンだよ。次気をつければ大丈夫だから」と慰めてくれる。私の方こそ、こんな素敵な上司に恵まれて、最高のパートナーだ。
「深雪ちゃんは、彼氏と別れてどのくらい?」
「……もう忘れました」
「そっか」呆れたように笑う雪さんに私も同じ笑みを返す。「ろくな奴じゃなかったんだな」言わずとも彼の顔に、そう書いてあった。
「まー、世の中には色んな奴がいるから」
「そうですね」
「俺みたいなのもやめといたほうがいいよ」
「どうしてですか?」
「ん? 決まってんだろ? モテすぎて、泣かせちゃうから」
「あー、なるほど」
「……反応がイマイチ」
「え?」
煙草に火を点け、煙を吐き出した。萎(しお)れた草木のように、へなへなと煙は消えていく。
「深雪ちゃん。俺が求めてたのは、そんな応えじゃないんだよ」
「じゃあ、どんな応えを求めてたんですか?」
「そうだなー……。『私も泣かされてみたーい』とか?」
「辛い恋愛はしたくないです。できれば、ドキドキして楽しい恋愛がしたいです」
「なるほどねー。俺もするなら、そういう恋愛がいいな」
「雪さんもですか!?」
「何でそんなに驚くの!?」
「だって、意外で……」
「俺だって、ドラマティックな恋愛に憧れてるよ!!」
「……ますます意外」
「俺にだって、ピュアな気持ちはあるんだからな!!」