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Seven
第5章 縮まる距離、開く距離

 会社に着くと、お昼を告げるチャイムが鳴っていた。

「もう昼じゃんかー。通りで腹が鳴るわけだ」

 大体、雪さんは外に食べに行くかコンビニで買ってきたお弁当を休憩室で食べることが多い。

「深雪ちゃんは、いつもどこでお昼食べてるの? 全然会わないんだけど」
「私は社食で食べてます」
「マジか!! 社食、美味い?」
「すごく美味しいですよ!」
「そんなに力入れて言うくらい美味しいの?」
「はい!」
「ふーん。じゃあ、社食行こっか」
「え?」
「一緒に昼食べに行こう」
「は、はい……」

 雪さんと一緒にお昼。それも社食で……。飛び上がるほど嬉しいのだが、彼はとにかくモテる。もう既に女子社員たちからの痛い視線を感じる。でも、私の隣を歩く彼は慣れっこらしく、何も見えていないような素振りだ。

「気にしすぎ」
「……気にしないほうが無理です」
「なんで?」
「なんでって……」

 顔を上げれば、通り過ぎていく女性たちから向けられる殺意のこもった眼差し。怖い……。視線が彼女たちと重ならないように、下を見てしか歩けない。

「他の人がどう思おうが、俺が選んだのは深雪ちゃんだから。そんなにビクビクしないで、堂々としてればいいよ」

 雪さんは、いつもズルい。私が望む言葉を何の気もなく、簡単に言い放つ。彼にドキドキしている様子は微塵もない。サラッと、川に流れている水のように言葉を空間に流していく。

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