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Seven
第1章 第一印象は笑顔

 「まもなく園田が見えますので、個室にご案内させていただきます」陣川さん・私の順で、受け付け女性の後に続いた。

 大きな会社なだけに、あちこちに来客室や応対室が設けられている。窓際にある部屋に私たちは案内された。「お待ちください」の声を残し、女性社員は退室。室内には陣川さんと私の二人きり。

 初めて訪れた場所は何かと緊張する。椅子に腰かけた姿勢を正し、スーツの裾を引き下げた私に陣川さんは笑みを向けてきた。

「そんなに畏まらなくていいよ。今は俺たちしかいないんだしさ」
「はい……」
「気を張りっぱなしじゃ疲れるでしょ? さっき会った三好(みよし)にも言ったけど、気を抜くことも大切だから」

 ちゃらんぽらんのようでいて、真面目な一面もある陣川さん。メリハリ上手なのかもしれない。だからなのか、張り詰めていた気持ちが少し緩んだ。

 軽いノック音が三回したあと、案内してくれた女性社員とは別の女性社員がお茶をお盆に乗せ、やって来た。彼女が室内に入ってきた瞬間、強めの香水が香り始めた。バニラ系の甘い香り。

 隣に座っている陣川さんの表情が少し強張った。と同時に彼女から視線を外し、明らかに見ないようにしているのが見て取れる。

「あら、陣川さん。もう私に興味はないの?」
「……それは、あなたも同じでしょ」

 不穏な空気が私と陣川さん、この女性の間で流れている。関係ない私を挟んで聞いてはいけない会話が繰り広げられていく。

「そんなことないわ。ねぇ──今夜、どう?」
「あいにく、先客がいまして」
「私より大事な女(ひと)?」
「……順位はつけられません。みんな、素敵な女性ですから」
「ふふ、陣川さんたら」

 陣川さんと彼女………男女関係なのだろうか? やっぱり──陣川さんは遊び人!?
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