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Seven
第5章 縮まる距離、開く距離
いちいち雪さんにかまっていたら私の心臓がもたない。それを知ってか知らずか、絶妙なタイミングで彼はときめく言葉を投げかけてくる。
「一口もーらい!」
「え!?」
きのこの炊き込みご飯を口に運ぼうとしたところ、腕ごと彼に掴まれ、私の炊き込みご飯は彼の口へ。
「ん~!! うまっ!!」
一人喜んでいる雪さん。私の脳内は【間接キス】で埋め尽くされ、フリーズ中。固まっている私を余所に彼は私の箸を使い、「食べないなら、もらう!」と食べだしてしまった。みるみる減っていく、きのこの炊き込みご飯。その分脳内に増えていく【間接キス】のワード。
大人なんだから、間接キスくらいで──と思う人もいるかもしれないが、大人も子供も恋愛に歳は関係ない。好きな人とは、何歳(いくつ)になろうがどんなことでもドキドキしてしまう。
「あ、ごめん……。美味すぎて全部食っちゃった。代わりに俺のあげる」
「え、でも……」
「遠慮はなしね! それとも──『あーん』する?」
「それは遠慮しますっ!」
「そう? はい、じゃ……交換こ」
渡されたエビフライ定食……というより、キャベツの千切り定食だ。エビフライは綺麗さっぱりなくなっている。残っているのは、キャベツの千切りと輪切りのレモン。小鉢に入った大根の漬物だけ。
「……ははっ、ごめん」
「……私のお昼」
雪さんと過ごした時間は楽しかったが、失ったきのこご飯は大きかった。