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Seven
第5章 縮まる距離、開く距離
会社を出ても気持ちが晴れることはなかった。それどころか、胸の痛みは増すばかり。彼が誰に対してもやさしいのは知っている。遊び人だってことも分かっていた。でも……その現場を目の当たりにしたのは、初めて。
【不特定多数】その中の一人でもいい。そう覚悟は決めたはずなのに……。自分も彼女と同じように捨てられるのかと思ったら、急に怖くなった。彼に本気はない。自分にだけ、愛情を注いでくれるわけじゃない。
色んな感情が混じり合って、心臓が鳴く。どくんどくん……音を鳴らしていく。酸いも甘いも、恋は表裏一体。雪さんを嫌いにはなれない。むしろ、どうしたら自分だけを見てくれるようになるのか、そんな事ばかりを考えてしまう。
──もっと彼を知りたい。もっと彼に触れたい。
雪さんに拘る理由が自分でも分からない。あんな遊び人を好きになったって……と思うのに、時おり見せる彼の寂しげな表情が浮かんでくる。何が貴方をそんな顔にさせるのか、気になってしまう。そして、思うんだ。──その顔をする時、隣にいるのは私でいたい。
恋がこんなにも怖いものだって知らなかった。夢中になって、虜にさせる。私はもう……今までの恋愛には戻れない。