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Seven
第5章 縮まる距離、開く距離
そんな理由で会社の車を与えられたとは……。隣の彼を見る目が冷ややかになってしまう。
「なんだよー、いいじゃん。でも俺の場合、向こうから声を掛けられるほうが多いけどね!」
「へへっ」と笑いながら、ウィンクを飛ばす雪さん。黙っていたら、モデルさんのような美貌の持ち主なのだけど……。彼の笑顔に合わせ、私は苦笑いを返す。
「それにしても、深雪ちゃんと会えてよかったよ」
「……え?」
「もう帰っちゃったと半分諦めかけてたから。急いで駅に来たんだ」
「そう、だったんですか……」
「うん。けど、まだ駅にいるような気も何となくしてたんだ。──こういうのを【ソウルメイト】っていうのかもね!」
にこっと微笑む彼。キザな台詞なのに、彼が言うとシックリきて様になってしまう。雪さんマジックとでも言うべきか……。
「ん? 俺と【ソウルメイト】は不服?」
「い、いえ!!」
むしろ、そうであってほしいと切望している。表面だけのビジネスのお付き合いじゃなく、しっかり彼と向き合っていきたい。【ソウルメイト】慌てて否定した私をからかうように「俺はシンパシー感じてるんだけどなぁ~。深雪ちゃんは感じてないの? ──ほら、ちゃんと言ってごらん?」上から妖艶な流し目を雪さんは送ってきた。
これじゃ、まるで別の──
「あ! 今、変なこと考えたでしょ?」
「へ? か、考えてないですよ!!」
「またまた~。本当、深雪ちゃんは顔に出やすいね」
「だから、考えてないですってば!!」
「むきになっちゃって、可愛いなぁ」
「かっ、可愛い!?」
「シンパシー感じない?」の質問の流れから「可愛い」と言われ、私の心音は完全に彼のペース。営業車より広い空間が広がる車内。そのため、至近距離のドキドキはないものの、程よい距離感が生まれ、常に見つめ合いながら会話をしている状態だ。これはこれで、視線のやり場に困る。でも、そう感じたのは私だけではなかったらしく、「なんか落ち着かない」と雪さんも運転席の窓の外に視線を向けていた。