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Seven
第5章 縮まる距離、開く距離
会話らしい会話もないまま、車は雪さんオススメのスポーツジムに到着した。
「じゃ、ここからは別メニューね」
「え!?」
一緒に来た=(イコール)一緒に汗を流す、だと思っていたのに、とんだ肩透かしだ。隣同士のランニングマシーンを使って、時おり微笑み合いながら走ったり……なんて想像していたのに。
「俺と同じメニュー、こんな細い腕じゃこなせないよ」
「っ!?」
急に腕を掴まれ、反射的に体が跳ねた。「行くか!」と私の腕を離し、雪さんは前を歩き始めた。遅れて、その後を追う。またしても不意打ちのボディタッチ。それもごく自然な触れ方。下心があっての触り方じゃない。
……だから、彼はモテるのだろう。何の気なしに彼は触れているのだろうが、触れられた側からしたら、ドキッとしてしまう。現代の日本において、積極的な男女は少ない。ボディタッチ自体、軽々しくできない雰囲気がある。触れたら嫌がるかな……と繋ぎたい手を引っ込めたり。
でも、私の前を歩いている彼はそういう考え自体、持っていないのかもしれない。いい意味で何も考えていないようにも思う。
階段を登った先にあるガラス扉を引き、「ちゅーっす!」と明るい声を飛ばしながら、雪さんはジムの中へ入った。トレーナーの方々から「お! 雪さん! ちゅーっす!」と同じ掛け声が返ってきた。