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Seven
第5章 縮まる距離、開く距離
ジムで借りたウェアに着替え、更衣室からジム内に戻ると数人の女性が一人の男性を囲んでいた。女性に囲まれている男性……雪さんだ。スーツ姿の彼に見慣れているから、スーツを脱いだら印象が変わり、気づくのが遅れた。
女性たちの雪さんを見る目はハートマークと化し、彼女たちの視線は体に釘付け。鍛えられた肉体が体にフィットしたウェアから覗いている。
「よくここには来るんですか?」
「まぁ、たまに」
めんどくさそうな顔をしながらも女性たちの質問にしっかり答える雪さん。優しいなぁと眺めていると、「ねぇ」と健康的な小麦色の肌をした爽やかな青年に声を掛けられた。少し明るめの髪も焼けた肌に合っている。身長は175~180㎝の間だろうか。雪さんと変わらないくらいか、少しだけ彼のほうが大きい気がする。肩幅が雪さんよりも彼のほうがあるから、大きく見えるのかもしれない。
「君が雪さんの連れ?」
「はい! 部下の西宮です」
「下の名前は?」
「深雪です」
「深雪、ね! オッケー!」
何がオッケーなのか全然分からない。私より年下に見える彼。おまけに初対面なのに、いきなりタメ口って……。呆気に取られている私を無視して彼は続ける。
「俺が深雪の専属だから。よろしくな!」
「え!? 専属?」
「そっ! 専属トレーナー。あ、なんなら【恋の専属】でもいいけど?」
「はい!?」
「なーに慌ててんの? ジョークに決まってるでしょ? あ、自己紹介してなかったな。俺、前田 友太(まえだ ゆうた)。ユータでいいから」
楽しそうに笑う彼は少年のようにあどけなくて、普段のキリッとした目つきからは想像のつかない笑みだった。……笑った顔は素敵なんだけどなぁ。
「じゃあ、行こっか!」このタメ口にはまだ慣れない。