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Seven
第5章 縮まる距離、開く距離
「おい、ユータ。何、人の連れを連れて行こうとしてんだよ!」
「あ、雪さん……」
雪さんに声を掛けていた女性たちはいつの間にか姿を消していた。帰ったのかもしれない。雪さんは、ユータくんに詰め寄った。
「何って、これが俺の仕事なんで」
「……だからって、手を掴む必要ないだろ」
「……あ」
雪さんに指摘されて気づいた。ユータくんに手を掴まれている。自然の流れだったから、気にも止めていなかった。ジム内は広々としている。人も多い。見失わないよう、配慮してくれたのだろう。でも、雪さんは気にくわない表情をしている。
「俺、今日は深雪ちゃんに付き合う」
私とユータくんの驚きの声が重なった。
「何言ってるんすか? 向こうで、ジュディさん待ってますよ?」
ユータくんが指差したほうを見ると、ムキムキの筋肉を露にした黒のタンクトップ一枚の男性がこちらに手を振っていた。
「それなら、ジュディさんも呼ぶ」
「は?」
「俺も深雪ちゃんと同じメニューやるから。俺が戻るまで一歩もその場から動くなよ!」
上から人指し指をツンツンと二度突き出し、「いいな!」と念を押すと、雪さんはジュディさんの元へ歩いていった。
「ったく……あの人のワガママにも困る」
「すみません……」
「なんで深雪が謝んの?」
「上司なので」
「ぷっ……真面目」
「ちょっ!?」
突然頭を撫でられ、困っているとユータくんが私の耳元に顔を寄せてきた。なに? 頭の中を疑問符が埋め尽くす。この状況、どうしたら──
「おい、ユータ!!」走ってきた雪さんがユータくんを私から引き離した。その直後、ユータくんが「……さっきの二人だけの秘密、ね?」と意味ありげに微笑み、雪さんの表情が強張った。