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Seven
第5章 縮まる距離、開く距離
二人の視線に挟まれながら、必死でランニングマシンの上を走った。足よりもバチバチとした二人からの視線に疲れる。
彼らの間に何かあったのだろうか……。なんとなく、そんな気がする。
「雪くん、もう少しスピード上げる?」
「いいよ、このくらいで」
「そう? 物足りないんじゃない?」
「……ジュディさん、相変わらず欲しがりだね」
「もう、やだぁ~」
ジュディさんと雪さんの会話も気になる。人は見た目によらない。男らしい体格をしたジュディさんだけど、彼の中にいるのは女性らしい乙女。細やかな気遣いができるし、私なんか比べ物にならないほど、素敵な女性だ。
「雪くん、休憩にしよっか」
「いや、あと少し──」
「ダーメ! 次のメニューもあるんだから、ここでお休みしましょ」
「……ジュディさんがそう言うなら」
「ふふ。ありがとう、雪くん」
彼らに合わせ、私も休憩に入った。雪さんとジュディさんの関係性に少し妬ける。息がぴったり合っていて、お互いに無理をしていないのが分かる。私といるときの雪さんはどこか気を使っている。会話が続かないときも、無理に話題を取り繕うこともあるし。逆に私も雪さんに気を使っている。というか……彼の前では自分を良く見せたくて。
「深雪ってさ」そんなことを考えていたら、ユータくんに話し掛けられた。
「人に合わせるタイプだよな」
「え?」
的を射た彼の発言に声が上ずった。確かに私は人に合わせる性格だ。自分を全面に出す雪さんタイプではない。
「だから、アイツも──」
「ん?」
「いや、なんでもない」
ちらっと彼は雪さんに視線を向けていた。……やはり、ユータくんと雪さんの間に何かが?
「さっ! 休憩おしまい! 次のメニューに行くわよ! みんなついてきて!」
明るいジュディさんの声に弾かれるように私たちは次のメニューへと移行した。