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Seven
第5章 縮まる距離、開く距離

 「連絡先教えて」走ってきたからか、ユータくんの瞳は熱を帯びていた。どうしようか迷っていると、彼の後ろからやって来た雪さんが「教えなくていい」と命令口調で私に告げた。

「俺は深雪に聞いたんだけど」
「大事な部下に変な虫が付いたら困る」
「変な虫って……どう見たって、アンタのほうが変な虫でしょ」

 言い争っている彼らを微笑ましく見ているジュディさん。仲裁に入る気はサラサラ無さそうだ。

「あの、ジュディさん」
「なーに?」
「止めなくていいんですか?」
「いいの、いいの! いつもの事だし。それより、自分を巡って争う男たち──どう?」
「どうって言われましても……」

 私を巡ってというより、男同士のプライドの張り合い。【この人には負けたくない】という思いがユータくんから伝わってくるし、雪さんからも【お前じゃ俺には勝てないよ】という思いが伝わってくる。

「……西宮ちゃんを雪くんが気に入ってる理由、少し分かった気がする」
「え?」
「しょうがないわねー。ほーら、二人ともその辺にしたら?」

 私にウィンクを投げると、ジュディさんは彼らの間に割って入った。──雪さんが私を気に入ってる? 本当に? 

 雪さんに確かめたくても確かめようがない。何も言わず、ただ視線だけを彼に送っていると、「帰るから、着替えておいで」やさしい声が返ってきた。ユータくんに向けていた目とは全然違う、穏やかな瞳。「はい」と返事をし、更衣室へ急いだ。

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