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Seven
第6章 グランジ
室内に二人を残し、私はオフィスの入り口付近にあるソファーに腰を落とした。どんな話し合いがなされているのか気になる。
「どうぞ」
「あ、どうもありがとうございます」
受付の女性が目の前の小さな円卓にアイスコーヒーを置いた。20代であろう可愛らしい女性。だが、身のこなしはプロフェッショナルで作法が美しい。私も彼女を見習わなきゃ……。
「どうかなさいましたか?」
「いえ……」
可愛い上に動作が綺麗だなんて、嫉妬してしまうほど羨ましい。自分の動きといったら、目も当てられないほど酷い。時々、雪さんからも注意されている。どうしたら女性らしさが身に付くのか誰かに教えてもらいたい。
「何かありましたら、お声掛けくださいね」
「ありがとうございます」
「では、失礼いたします」
会釈とやわらかな微笑みを残し、彼女は自分の業務へと戻っていった。
緊張のせいか、暑さのせいか分からないが喉が乾き、アイスコーヒーにガムシロップとミルクを入れ、喉を潤した。知らない場所での一人の時間。退屈とまではいかないが、こういう空いた時間を勿体ないと思ってしまう。というのも、自分の机の上に溜まっている書類が頭の片隅にあるから。この時間を書類整理に充てられたらなぁ……。
それにしても、青葉さんが起業していたとは驚きだ。そういえば、社長室に呼び出された日。社長と青葉さんがビジネスの話をしていた。もしかしたら、あの時すでに──
「お待たせ。帰るよ」
「は、はい!」
室内から出てきた雪さんは不機嫌で、青葉さんは「また来てね」とにこやかに手を振っていた。青葉さんに会釈をし、とっとと先を行く雪さんの後を急いで追いかけた。