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第28章 choice A 遭遇

「お疲れ。」

約束の時間を少し回ってしまい、急ぎ足で会社を出ると、少し離れた交差点のあたりに彼を見つける。

「お疲れ様です。ごめんなさい、少し遅れちゃった。」

「時間まで余裕あるし気にしないで、行こっか？」

「うん。」

たわいもない会話をしながら、駅までの道を2人で並んで歩く。

しばらく歩いて会社が見えなくなると、不意に手を繋がれた。何も言わず、そっと遠慮がちに繋がれる手から緊張が伝わってくる。

その手をそっと握り返すと、一瞬驚いた顔をした彼が嬉しそうに口元を緩ませ、握った手にギュッと力が籠められた。

「痛い――、わざとでしょ。もぉいじわる。」

「うん、照れ隠し（笑）」

気持ちを少しずつ確かめ合う、そんな時間が心地よかった。