この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
当機は偶然により、運命を変更致しました
第2章 涙のチキン南蛮
「メニューの、名前なんだ……」
「見たことないの?メニュー」
「これしか頼んだことない……から……」
これが名物だからって、一緒に並んで一緒に食べた。ここには駐車場が無いから、通ってたのはこの店舗じゃ無いけど。
だから、これは思い出の味だけど、思い出じゃない。
……なんて事は、考えない。
「お先に、頂きます……」
涙が出そうになって、チキン南蛮を切って齧り付いた。
「どうぞどうぞ。そうか、あんまり浮気しないんだねー。だから胸派も知らないのか」
浮気しないって、何。
グサッと来た。
知らないとは言え、なんてこと言うの。
無視してやろうかと思ったけど、腹いせに八つ当たりする事にした。
「なんなんですか、さっきから。胸とか胸とか胸派とかって」
「あ、気分悪くした?ごめん!」
「セクハラですよ。通報します」
「や、だから」
「お待たせ致しました」
お隣さんが困った顔になってたら、助けが来た。
出張……じゃない、ビジネスセットが運ばれて来た。
「お、来た来た!ありがとう!」
お隣さんは困った顔を、ころっとにこやかな笑顔に変えた。それから、私に自分の皿の上を、指差した。
「これだって、これ。胸派。」
「……これ?」
これって、それ?
それって、チキン南蛮ですよね?
訳分からない顔をしてる私に、お隣さんはにこにこ笑った。