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当機は偶然により、運命を変更致しました
第2章 涙のチキン南蛮

「メニューの、名前なんだ……」

「見たことないの?メニュー」

「これしか頼んだことない……から……」

これが名物だからって、一緒に並んで一緒に食べた。ここには駐車場が無いから、通ってたのはこの店舗じゃ無いけど。
だから、これは思い出の味だけど、思い出じゃない。

……なんて事は、考えない。

「お先に、頂きます……」

涙が出そうになって、チキン南蛮を切って齧り付いた。

「どうぞどうぞ。そうか、あんまり浮気しないんだねー。だから胸派も知らないのか」

浮気しないって、何。
グサッと来た。
知らないとは言え、なんてこと言うの。
無視してやろうかと思ったけど、腹いせに八つ当たりする事にした。

「なんなんですか、さっきから。胸とか胸とか胸派とかって」

「あ、気分悪くした?ごめん!」

「セクハラですよ。通報します」

「や、だから」

「お待たせ致しました」

お隣さんが困った顔になってたら、助けが来た。
出張……じゃない、ビジネスセットが運ばれて来た。

「お、来た来た!ありがとう!」

お隣さんは困った顔を、ころっとにこやかな笑顔に変えた。それから、私に自分の皿の上を、指差した。

「これだって、これ。胸派。」

「……これ?」

これって、それ?
それって、チキン南蛮ですよね?
訳分からない顔をしてる私に、お隣さんはにこにこ笑った。
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