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当機は偶然により、運命を変更致しました
第2章 涙のチキン南蛮
「うん、これ。チキン南蛮って、胸肉使ってる店と、モモ肉使ってる店が有るんだよ。で、胸派とモモ派が居る訳」
……知らなかった。
それで、胸……!!
セクハラじゃ無かった。
ただの、美味しい話だった。
「はい、これ、お詫び。食べた事無いでしょ?」
私がばかな勘違いに黙り込んでたら、お隣さんは自分のハンバーグを一口切って、私の皿に乗せてくれた。
「え!良いです、そんな……ご飯大盛りなのに、おかず減っちゃいます!」
「良いって良いって。ハンバーグも旨いよ?良かったら食べてみて。旨いもんは誰かと食べる方が、より旨いから!」
なんなの、この人……いい人すぎる……!!
せっかくだから、ハンバーグを半分切って、口に入れた。
柔らかくて、しっかり肉の味がして、噛むと肉汁が溢れるような、ハンバーグ。
「美味しいです……」
「そう?良かった」
もう半分のハンバーグを噛み締めてたら、涙が出て来た。
辛いとき優しくされるって、悲しいけど、嬉しい。
ここには彼しか知り合いなんて居ないから、お隣さんが偶然すごくいい人で、偶然また会ったりしなかったら、優しくしてくれる人なんか、居なかったんだ。
優しくしてくれる人どころか、私のことを知ってるだけの人だって、居なかった。
……偶然に、感謝しよう。
「わ、ごめん!」
そう思ってたら、泣きそうなのに気付かれた。
「ごめん、やっぱり色々気に触ったよね?」
「ううん。違うんです。大丈夫……」
私は慌ててバッグを開けた。
「ほら!おかげさまで、鼻セレブもまだ有るし!」
お隣さんは私をじーっと見て、溜め息を吐いた。
「君、この後、時間ある?」
「え?」
「どこかでちょっと飲まない?ここもう閉店だし、長居できない店だから」
空港では、警戒した。
バスセンターでは、疑った。
さっきも少しムッとした。
でも。
もう、どうにでもなれ。
そんな気持ちで、頷いた。