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当機は偶然により、運命を変更致しました
第2章 涙のチキン南蛮
*
「ただいま戻りましたー」
温泉をたっぷり楽しんで、すっぴんのまま、部屋に戻った。
カードキーをかざして、扉を開ける。
「おかえりー」
居るか居ないか分からないけど声をかけたら、反射的な返事が返ってきて、ちょっと笑った。
「何?何かおかしかっ……」
「あー、なんか、職場の昼休憩上がりみたい?って……どうかしました?」
ショーゴさんは睨めっこしていたパソコンから目を上げて、ちょっと固まってた。
「や……若返ったなーって」
「それ、褒めてます?馬鹿にしてます?」
ちょっとだけ、ムッとした。
すっぴんになると、童顔がバレる。
今まで付き合った人たちにも、うっかり突然さらしちゃって、詐欺とか言われた事が有る。
「馬鹿にしては、居ない。褒めてるかと言われると……どうだろう……」
あのー?真剣に考えなくても、良いですよ?
ショーゴさんは、付き合ってる人でも、付き合ってた人でも、付き合う人でも、無いんですから。
持って帰ってきたバスタオルをタオル掛けに掛けて、寝る支度をしてたら、もう返事は返って来ないだろうと思った頃に、返事が来た。
「単純に、可愛いなって思った」
「え」
……うわ。
ドキッとした。
こんなにストレートに可愛いとか言われたの、いつぶりだろう……。
なんか、顔に血が上る。
付き合ってもないし、付き合う予定も無い人だけど、じわじわ嬉しい。
「ありがとう、ございます?」
「なんでそこ疑問系?」
「褒めてるかと言われると微妙、って言ってたから」
そう言うと、またうーんと考えて、さっきより早めに返事が来た。
「褒めてるかと言われると微妙だけど、ほんとに可愛いなとは、思ったよ」
「……ありがとうございます。」
なんだ。
なんだろう、この微妙な空気は。
いいホテルの癖に換気が悪いのかな、この部屋。
「じゃ、俺も風呂行ってくる。鍵持ってるから、寝て良いからね」
なんだか息がしにくい感じがして、声が出なかったので、頷いた。
「……じゃあね。お休み、まほちゃん」
おやすみなさい、ショーゴさん。
……って、飛行機でのありがとうみたいに、また、きちんと言えないうちに。
浴衣とかバスタオルとかをそそくさと抱えたショーゴさんは、部屋からさっさと出て行った。