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第1章 契約

みずきは契約書を手に取り、書いてある内容に軽く目を通す。
内容は、一ヶ月の恋人契約。相手は、今人気のアイドルグループの一人、翔だ。
何をするかの記載はなく、支払い金額は５０万円。契約更新は一ヶ月後に両者の同意があれば可能。
そして最後に、署名欄となっている。

「恋人契約かあ」

みずきは、ふふっと笑いながら呟いた。
翔というアイドルは、最近ではテレビで見ない日はないほどの人気グループだ。
その中でもクールでかっこいいと人気のある翔は、プライベートは一切謎。
恋愛の噂すら聞いたことがない。
そんな相手と一ヶ月恋人になれるなら、むしろこちらがお金を払いたいくらいだ。

手渡されたペンをさらさらと紙に走らせ、署名を終えた契約書を彼に差し出す。
確認を終えた男性がにこりと微笑んだ瞬間、突然酔いがさっと冷めたのをみずきは感じた。

「では、契約成立ということで」

その言葉の後に名刺を渡され、番号を交換すると、彼はまた微笑んだ。
名刺はシンプルなもので、彼の名前と携帯の番号だけが書いてある。
白いその紙には　山田　優二　と書かれていた。

帰りは山田にタクシーを拾ってもらい、アパートにたどり着いた途端、より一層の恐怖に苛まれ、現実から逃げるようにしてみずきはベッドへと潜り込んだ。