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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第7章 婦人の悩みと殿方の困惑
*
「只今戻りまし、た……?」
「おかえり、ジャナ」
「遅かったな」
部屋に戻ったジャナを迎えてくれたのは、難しい顔をした師範と兄弟子でした。
薬草の採取を終えたのち、外でゴミを取って水洗いして、漬け込む前に陰乾しするものと乾燥させて保存するために天日干しするものに分けて、それぞれ処理をしておりました。
ですので稽古終了からは、かなりの時間が経って居ます。なのに兄弟子が師範と居るのいう事は、何か理由が有るのでしょう。
「お待たせして、申し訳有りません。つい薬草摘みに夢中になりまして……何か、私にご用でしょうか?」
「や……それが……」
小柄なジャナがぺこんと頭を下げるのを、大男二人は困った顔で見下ろしました。
「ジャナは、西の御館様を存じて居るか?」
「……西?」
ジャナの故郷とは反対方向に当たる地です。人となりや土地柄等の噂すら、ほとんど聞いたことが有りません。
「西の地を治める家は、代々女系の御館様が、夫を迎えて継いでいる。その紋章から雌獅子の一族と称されているが、当代は殊に気難しい事で有名な女傑でなあ……まだ女盛りを過ぎたか過ぎないかというお年なのだが」
二人だけの時であれば「そんなに年でも無い癖に、女王様って感じのいけ好かない女なのよねーっ!!」とでも言っていたであろう表情のウバシは、口元にきゅっと握った手を当て掛け……たものの、考えるふうに顎を擦って、可愛い仕草を誤魔化しました。
「御館様は、時々私共に護衛を申し付けられる。一人か二人、若くてなるべく初々しい者を、と……」
「それが最近、護衛なんだか夜伽なんだかみたいになっててぇー……困っておるのだ、が」
「……お前の噂を、聞いたらしくてな……」
「…………へっ?」
困惑顔のウバシとネリのはっきりしない物言いの曖昧過ぎる着地点を聞いて、ジャナの頭は混乱しました。