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第7章 婦人の悩みと殿方の困惑

「そもそもネリ先生は、私にお話にいらしたんですよね？たまたま不在だったから、師範さまに先に相談されてただけで」

「ぐ」

「師範」

　ややこしいが上にも更にややこしい隠匿と誤解の結果として、ウバシとジャナがただならぬ仲であると思い込んで居るネリは、申し訳無さそうに口を開きました。

「反対なさっても、仕様がないでは無いですか。今回なんとか逃れられたとて、どうせいつかはジャナにも声は掛かるのです。あちらとは、何代も続いているご縁です。断り切れる物では御座いますまい」

「むぅ……」

「それに、本人が行っても良いと言って居るのですよ？一回ちゃっちゃと終わらせて置けば、もうとやかく言われる事も無くなるでしょうし」

（んなもん若い男子を御所望なのにジャナみたいな小娘が行っちまった日にゃあ、ちゃっちゃと終わるもんも永遠に終わらなくなる上に永年のご縁も消し飛ぶわぁあああこの唐変木めがぁああああああ！！)

　ウバシは、心の中で叫びました……が。

「あの……」
「なにっ？！」
「何だ」

　控え目に発せられた呼び掛けとは逆に、ウバシとネリを見上げて微笑んだジャナの双眸は爛々と危険な光を奥底に宿して居りました。

「ご心配無く、師範さま。ネリ先生の仰る通り、ちゃっちゃと済ませて参ります」