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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第7章 婦人の悩みと殿方の困惑
 こんな風に鼻歌でも歌い出しそうな時のジャナは、禄でもない事を考えている事が多い……というのを、まだ師弟生活がそれほど長くないというのに、ウバシは既に思い知っております。

(……これ……今からでも……無理矢理にでも、止めるべき……?)

「とにかく、師範さま。」

 出掛ける事が難しくなり、尚且つジャナがあまり辛い思いをしない程度で済むような都合のよい怪我は何か無いだろうかと剣呑な考えまで湧いてきた時、ジャナがきっぱりと頭を下げました。

「お願いですから、私を御館様の元に行かせて下さいませ」
「……でもっ……」
「私は、他の者とは違います。渋々行くのではありません、行きたいと思ったから行くのです」

 それを聞いたウバシは、頭痛と眩暈を感じました。他の者とは違うも何も、大違いーー根本的な、性別が違うのですから。
 頭を抱えた師に向かって、ジャナは笑顔ではきはきと宣言しました。
 
「お約束致します、師範さま。危ない事も、今までの先人の皆様方の顔に泥を塗る様な事も、決して致しません。……私があちらに赴くことは、御館様にも、こちらの諸先輩方にも、師範さまにも……必ずや、お役に立つで有りましょう」
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