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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第2章 その弟子、現る
「どうして……」
「……師範にも、分かりませんか……」
中堅の弟子で審査官の一人でもあるネリは、溜め息を吐きました。
「倒された相手の一人に聞いてみましたが、本人にも分からないのです」
ネリは、戸惑った様に呟きました。
「重い突きでもなく、見た通り小突かれた程度で、痛みが有った訳でも、強く押された無いそうで……何故あれで自分が倒れたのか不思議だ、と。選ばれてここに来た人間ですから、それなりの実力の有る者なのに、です。倒れた事は事実だが、信じられない、腑に落ちない、と……まるで幻でも見た様な、狐に抓まれた様な顔をしておりました」
独り言の様に語られるネリの言葉を聞いていたウバシの目が、子供の様にきらきらと輝き始めました。
「……面白いっ」
「え?」
「ちょっと、抓まれて来る!」
「えっ、師範っ!?」
止める間もあらばこそ、ウバシは期待でウキウキしながら、闘技場に向かって駆け出しました。