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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第2章 その弟子、現る
「しばし、待て!!」
ウバシは次の手合わせが始まりかけた闘技場に乱入し、去りかけていた勝者の少年を引き止めました。
「師範?!いかがなさいましたか」
「悪い。一旦中休みとする!」
審査官に手を上げて断ると、驚いて振り向いた少年に話し掛けました。
「初めまして。手合わせお願い出来る?」
向かい合うと、子供と大人くらい……と言うよりも、蝉と大木くらいの体格差が有ります。
「師範!!無茶です、入門希望者を潰すお積もりですか!?」
「大丈夫大丈夫!ちょーっとだけだから……良い?イヤ?これは審査じゃなくって、アナタと手合わせしてみたーい!っていう単なる私のワガママだから、気が向かなければ断っても良いのよ」
ウバシは審査官の方を見ずにひらひら手を振り、少年を正面から見据えて返答を求めました。
相変わらず見えているのか居ないのか分からない前髪の下にある口を半開きにしてウバシを見上げていた少年は、唖然としながら呟きました。
「……師範さま……なのですか?」
癖なのか、方言なのか、生まれつきの発声がそうなのか。少年は「さ行」の音の発音が、少し苦手な様でした。ともすれば「しはんしゃま」と聞こえそうなその口調は、見た目以上に幼い印象を与えました。
「ええ、師範のウバシよ。ここの、頭」
それを聞いた途端、少年の雰囲気が変わりました。