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秘密の師範と内緒の愛弟子(ビスカスさんのサイドストーリー)
第3章 少年の秘密
「っ!?」
少年……ではなく、少年を装っていた少女は、ガタンと大きな音を立てて、立ち上がりました。
「どうしてっ……」
「今度のどうしては、どうして分かったのか、かしら?……そんなの、見てたら分かるでしょー?むしろ、どうして今までバレなかったのかって方が、不っ思議~」
ウバシは眉を顰めると、カップに残っていた薄ら甘い湯を飲み干しました。
「みーんな、節穴ばっかりね。男ばっかり見てるからかしら?……今回の審査官全員シメとかなきゃ」
ぶつくさぼやくウバシの向かいで、少女ががばっと頭を下げました。
「お許し下さいっ、師範さまっ!!」
「んー?お許しぃ?」
ウバシはわしわしと、目の前で下げられた銀の頭を撫でました。
「やだぁー!別に、怒ってないわよー?帰すのが勿体ないなー、とは思うけど……」
「帰すっ?!」
「あらまっ」
下げていた頭を突然上げて叫んだ少女の前髪が乱れて、隠れていた目が見えました。
一見黒に見える瞳は、よく見ると深い灰色をしています。少女の瞳は、枯れ木立の奥に現れる冬の湖の様な、何ともいえぬ光を湛えておりました。
「まーあ!……綺麗なお目々ねえ……!」
「っ」
少女は、慌てて座って、前髪を直しました。灰色の目はまたひっそりと見えなくなってしまいました。
「やん、勿体なーい!隠さなくっても、良いのにー!」
「私っ……私は、不合格なんですかっ?!」
「へっ?」
見ようによっては愛らしくなくもなく唇を尖らせたウバシに、噛み付く様な問いがぶつけられました。